本書は投資と市場の仕組みに関する考え方を一変させる画期的な本になっている。著者のスウェドローは投資で成功しているだけでなく、多くの著書のあるベストセラー作家でもある。本書でスウェドローは個人投資家に向けて、なぜ一生懸命稼いだお金をドブに捨てるようなことをするのか、またあなた自身ではなく、なぜブローカーや証券会社やファンドを富ませるようなことを嬉々としてやるのかに疑問を呈し、そんなことは一刻も早くやめるように説き、勝者のゲームを始めるため、多くの確かな証拠を、彼自身の経験に基づいて示している。
本書はまず、投資のより良い方向性を決める方法を分かりやすくだれにでもできるように説明し、次に市場を弱気相場が襲ったとき、多くの投資家が見通しを失い、恐怖と強欲から間違った判断を下すなかでも、前もって決めていた方針から外れない方法を紹介している。本書からは、以下のようなことを学ぶことができる。
●市場の実際の仕組み、証券価格の決まり方、リスク調整後に市場を上回るリターンを上げるのが難しい理由
●ポートフォリオを構築するときに下すべきカギとなる判断
●人間の性格がどのようにして投資のミスにつながるのか、知識がいかにそれを避ける助けになるのか
●少ないエネルギーでより速く目標額に到達するための単純だが勝てる長期投資戦略を立てる方法
本書は、市場の実際の仕組みを説明し、読者の投資と市場に対するアプローチの仕方を変え、知識に基づいた賢い判断を下すための十分な知識を与えてくれる。これは、ノイズを切り捨てて生涯にわたっての富を築きたい個人投資家にとっての必読書であり、教科書である。
第1部 市場の仕組み――株価の決まり方と市場平均をアウトパフォームするのが難しい理由
第1章 株と債券のリスクとリターンを決める要因
第2章 市場はどのように価格を設定するのか
第3章 パフォーマンスの持続性――アスリートと運用会社
第4章 市場を継続してアウトパフォームするのが難しい理由
第5章 素晴らしい会社が高リターンの投資先にはならない
第6章 市場の効率性とピート・ローズのケース
第7章 安全性分析の価値
第8章 何を望むかは注意が必要
第9章 FEDモデルとマネーイルージョン
第2部 戦略的なポートフォリオにかかわる判断
第10章 トッププレーヤーでも勝てそうにないとき
第11章 偶然の悪魔
第12章 柔軟に考える
第13章 八方ふさがり
第14章 株は投資期間の長さに関係なくリスクが高い
第15章 個別株は投資家が考える以上にリスクが高い
第16章 すべての水晶玉は曇っている
第17章 正しい見方は一つだけ
第18章 ブラックスワンとファットテール
第19章 金は安全資産なのか
第20章 高等生命体の懸念
第3部 行動ファイナンス――敵に会った、それは自分だった
第21章 「おまえはまだ真実を受け止められない」
第22章 リスクにはとる価値がないものもある
第23章 問題をどうとらえればよいのか
第24章 なぜ賢い人たちが愚かなことをするのか
第25章 戦わずして勝つ
第26章 ドルコスト平均法
第27章 パスカルの賭けと賢い判断
第28章 買い・保有・売りと保有効果
第29章 投資家の行動の原動力
第30章 経済的に不合理な配当株を好む投資家
第31章 投資における不確実性
第4部 投資でも人生でも勝つ戦いをする
第32章 二〇ドル札
第33章 投資家の最大の敵
第34章 弱気相場は必要悪
第35章 マッドマネー
第36章 ファッションと投資の愚行
第37章 セル・イン・メイ――金融界の占星術
第38章 高パフォーマンスのファンドを追いかける
第39章 足るを知る
第40章 大きな石
第41章 二つの戦略の物語
第42章 信頼できるアドバイザーの見つけ方
結論
付録A 実行――推奨する投資ファンド
本書はバッキンガム・ストラテジック・ウエルスの調査部長であるであるラリー・E・スウェドローによる“Enrich Your Future : The Keys to Successful Investing”の邦訳で、投資で生き残り、成果を上げるための知恵について解説した入門書である。
スウェドローの著書では二〇一八年に出版された『ファクター投資入門』(パンローリング)が有名で、これはかなり衝撃的な相場書であった。今でもファクター投資について、一般投資家にも理解できるように分かりやすく説明できている書籍はほかにはない。
だが、それ以上に革新的だったのは、二〇〇二年に邦訳が出版された『間違いだらけの投資法選び』(パンローリング)である。私は当時、近しい人から、投資に関して読んでおくべき書籍は何かと問われ、『間違いだらけの投資法選び』だけを手渡したことをよく覚えている。そこでは、投資において必要なのは特異な技術や優れた感覚ではなく、単に客観的で合理的な判断と受動的な行動であるということが繰り返し語られていた。今でこそ、インデックス投資の優位性とアクティブ運用の欠陥は広く認識されているが、当時はそれを理解している人はほとんどいなかった。あれから二〇年以上が経過した今、スウェドローの主張が完全に正しかったことは明らかだ。彼のアドバイスに従った人ならば、他のあらゆる投資スタイルを凌駕し、十分な資産を築くことができたことだろう。
●年率リターンの中央値はわずか五・一%で、市場を七・七%アンダーパフォームした。
●年率リターンの平均はマイナス一・一%だった。
●インフレを考慮しないで対象期間に株の三九%は資金を失った。
●インフレを考慮しないで株の一九%は七五%以上の価値を失った。
●株の六四%はリターンがラッセル三〇〇〇をアンダーパフォームした。
●市場の上昇にかかわった株はわずか二%だった。
株を選んで買った投資家は、ほぼ五分の二の確率で資金を失い(対象期間に市場を一六九四%以上アンダーパフォームし、さらに累積インフレ率の一〇七%を失った)、約五分の一の確率で投資額の七五%とインフレ分を失った。ちなみに、指標をアウトパフォームする株を選ぶ確率は、三分の一を少し超える程度だった。
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