私が本書を初めて読んだのは、トレードに興味を持ち始めて間もない頃でした。
本書は、トレードにまつわる心理的な側面について解説しており、何度も何度もひたすら心理について言及し続けています。トレードの実践経験はおろか、まだトレードというもの自体よく理解していなかった当時の私にとっては「何で同じようなことを何度も繰り返すのだろう」としか思えませんでした。すべて読み終えたときに感じたことは「どうやらトレードにおいて人間の心理というものは相当程度重要らしい」ということだけでした。
しかしその後、他の本などでトレードに関する知識を付け、いざ実践に挑んでみて、強く本書のことを思い起こされました。「なるほど、あの時何度も何度も、しつこいくらい聞かされたあの文章は、あの言葉は、こういうことだったのか」と気づかされ、本書を急いで探し、再び読み返しました。以前とまったく同じ文章が、今度は深く共感でき、また必ず抑えておかなくてはいけない重要事項のひとつであることを思わされました。まさに目からウロコです。
私は現在、システムトレードによる自動売買環境を研究・開発しています。自動売買といえば、実際に発注作業を行うのが自分自身ではないため、心理とは無縁だと思われがちですが、それは間違っています。
例えば、もし事前に何度も検証し、良い成績を記録していたシステムを実際に使い始めたら、検証どおりの結果が出なかった場合、あなたはどうしますか?このようなことは十分起こりうることです。あなたは自分のシステムを信用し、損失を出していても使用し続けますか?それとも、そのシステムの使用をやめて別のシステムに変更しようとしますか?
これらはすべて心理的な側面を含む問題であり、自動売買にも心理は決して無縁ではないのです。
本書はトレード初心者の方から上級者の方まで、広くお勧めできる良書です。