著者であるクリステンセン教授の話から始めると、彼は、純粋な大学人ではなく、経営コンサルタント、ホワイトハウスの研究スタッフ、ベンチャー企業のCEOなど様々なキャリアを経験している。そして40代の後半にハーバードビジネススクール博士課程の学生となる。そこからの彼の経歴はすさまじく、1992年、通常4、5年かかる博士課程をわずか2年で卒業してしまう。しかも、その博士論文はインスティチュート・オブ・マネジメント・サイエンスから最優秀学位論文賞を受ける。その後、ウイリアム・アバナシー賞、ニューコメン特別賞、マッキンゼー賞とあらゆる経営学関連の論文賞を取っている。
これらの賞をとった論文の集大成として出版された本書は、1997年に出版されたビジネス書の中でもっとも優れたものに与えられる「ファイナンシャルタイムズ/ブーズアレン・アンド・ハミルトン・グローバル・ビジネス・ブック賞」を受賞している。また、アマゾン・ドット・コムの1999年の年間ベストセラーにおいても総合部門で34位であった。ビジネスウィーク誌1999年6月14日号は、「本書はCEOがインターネット時代のためにビジネスを再構築するための指南書」と述べ、ニューヨークタイムズ紙1999年11月3日号は、「本書はインターネット戦略で先駆けようとする経営者の必読書」と書いている。
このようにこの本は、技術者のための本ではなく。経営者、投資家などビジネス特にハイテク企業を分析する人たちに非常に大きな示唆を与えてくれる。また、そのケースには、ソニーやホンダをはじめ多くの日本企業の名前が成功事例として登場しており、日本のビジネスマンにも興味を持ちやすいと思われる。
ここで、クリステンセン教授が唱えるさ様々なコンセプトの一例を紹介すると、大企業が技術革新を進める上で陥りやすい罠は、成功したハイテク企業であるほど既存の顧客の将来ニーズを中心に研究開発に取り組むので、初期段階の破壊的技術革新の低レベルの製品は見向きしない。つまり、既存のハイエンドユーザとの関係が強すぎて膨大なローエンドユーザを見過ごしてしまうことでである。そして、ベンチャー企業などが創出する破壊的技術革新は、新市場が拡大発展していくにつれて、性能も飛躍的に向上していき、実は既存市場(ハイエンド市場)の性能という壁までうち破り、市場全体を席巻していくことになる、としている。確かに、日本の企業を見ていても、製品は高性能なのに価格競争にさらされてちっとも儲からないところや立派な研究所を持っているのに競争力がある製品やサービスと出せないところがあるが、本書は、このような企業を分析するためのフレームワークを与えてくれるだろう。
とにかく、ハイテク企業に興味がある方、米国のビジネスマンと話す機会が多い方にご一読をお勧めしたい。
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