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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/06/12 11:16, 提供元: フィスコ クリアル Research Memo(6):2025年3月期は大幅増収増益。「CREAL PRO」が第2の柱に成長(2)*11:16JST クリアル Research Memo(6):2025年3月期は大幅増収増益。「CREAL PRO」が第2の柱に成長(2)■クリアル<2998>の業績動向 3. KPIの動向 「CREAL」の売上総利益はGMV×テイクレートからなる。テイクレートは、案件組成手数料、ファンド運用期間手数料、償還手数料からなる確定フィーと、ファンドの外部売却時のキャピタルゲインのプロフィットシェアである変動フィーで構成され、これまでの実績から8〜10%としている。GMVは調達時点(ファンド成約時点)の数値で集計・公表される一方、「CREAL」の売上高及び売上総利益への計上は取引決済時点(物件売却時点)で行われることから、GMVの成約から売上総利益の計上までに多くのファンドで約1年前後のタイムラグが生じる。このため、GMVは「CREAL」のサービスの事業規模を示すとともに、売上総利益の先行指標となり、KPI中でも重要だ。一方で、「CREAL PB」の売上総利益は売上高×粗利率で算出される。また、「CREAL PRO」はフィー収入が主体で、売上の大部分が売上総利益となる。主力の「CREAL」の売上総利益は全体の39.2%(2025年3月期)と利益成長に大きく貢献することから、同社はGMVと投資家数を最重視し、リピート投資率、売上総利益等もKPIとして設定する。 GMVは2025年3月期末時点で累計733.2億円(前期比53.9%増)と大きく成長した。2025年3月期実績は256.9億円と前期比28.0%増加したが、期初計画300.0億円に対しては85.6%の未達となった。背景として、ファンドの多様化等で規模は拡大したものの、ファンド組成まで時間を要したことや、競合他社の影響がある。比較的新しい分野のオンライン不動産投資は、市場の伸びしろが大きいため競争が激化している。同社はリーディングカンパニーとしての自負から安易な金利競争に入り込まず、商品開発力やマーケティング等の強みを生かした高いサービス品質で対抗する考えで、計画比未達ではあるもののGMV累計としては堅調な伸びを示しており、業績面では懸念はない。また、GMVの基盤となる重要な要素の獲得投資家数は累計で97,065人に上り、前期比52.0%増と大きく伸長した。2025年3月期通期計画でも30,000人獲得を目標とし、33,186人(達成率110.6%)と計画を達成した。SBI証券をはじめ、各金融機関等との協業による顧客獲得活動が奏功した。 GMVに関する重要指標の1つである「CREAL」投資家のリピート投資率※は2025年3月期第4四半期で89.8%と前年同期比1.3ポイント上昇した。リピート投資率は新規投資家の投資割合にもよるため獲得施策等の状況によって上下するが、2025年3月期は第1四半期を除いて堅調に推移し、平均して87%水準を保っている。顧客の投資マインドの高まりで投資家獲得も順調と言えるだろう。 ※ 過去1年間に投資実績がある投資家の投資金額が該当四半期のGMVに占める割合。 なお「CREAL」は、ファンド運営終了後も償還された金額と同水準、もしくはそれ以上の金額を新ファンドへ再投資するロイヤリティの高いユーザー層を獲得していることから、SaaSに近い安定積み上げ型モデルの収益構造となっていることが窺える。同社はSBIホールディングスとの提携強化が進んでいるほか、ファンドの拡充にも注力しており、今後もさらなるGMV及び累計投資家数の成長が想定され、再投資プラス新規投資のループも大きく拡大するものと予想される。「CREAL」は成長性と安定性を内包し、同社事業全体の成長ドライバーとして、さらなる高い成長ポテンシャルを有するサービスになると弊社では見ている。 財務健全性はクラウドファンディング特有の影響を除いた貸借対照表を基に判断 4. 財務状況と経営指標 2025年3月期末における資産合計は、前期末比17,187百万円増の52,936百万円となった。これは主に、現金及び預金の増加7,839百万円、預託金の増加958百万円、販売用不動産の増加6,232百万円、臼木証券を子会社化したことに伴う証券業における預託金の増加867百万円や証券業における信用取引資産の増加5百万円、TATに関わる関係会社株式の増加730百万円によるものである。負債合計は、前期末比15,720百万円増の47,663百万円となった。これは主に、「CREAL」事業拡大による匿名組合出資預り金の増加15,994百万円、短期借入金の減少2,680百万円、長期借入金の増加912百万円、臼木証券子会社化に伴う証券業における預り金751百万円及び証券業における信用取引負債の増加5百万円等によるものである。純資産合計は前期末比1,466百万円増の5,273百万円となった。これは主に、新株予約権の行使による資本金及び資本剰余金の増加各35百万円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上1,351百万円に伴う利益剰余金の増加によるものである。 同社の財務状況の特長として、負債の部にクラウドファンディング預り金2,654百万円、匿名組合出資預り金37,278百万円を計上したが、それと均衡して資産の部に現金及び預金15,699百万円のうちクラウドファンディング関連15,261百万円、販売用不動産30,711百万円のうちクラウドファンディング関連27,186百万円を計上した。資産合計52,936百万円のうち、80.2%をクラウドファンディング関連の勘定科目が占める。なお、匿名組合出資預り金は匿名組合出資であるため、法的に返済義務を負う性質のものではないが、貸借対照表上では負債として計上される。このため参考値ながら、クラウドファンディング特有の会計処理に関する項目を除いた実質的な自己資本比率は39.8%※1と、貸借対照表に基づく自己資本比率9.8%に比べて高い状態にある。流動比率についても貸借対照表からは110.3%となるが実質的には137.0%※2となり、財務健全性については問題ない水準と弊社では捉えている。 ※1 クラウドファンディング関連の主な勘定科目及び残高として、クラウドファンディング預り金、匿名組合出資預り金を資産合計から除外して算出。 ※2 クラウドファンディング関連の主な勘定科目及び残高として、販売用不動産(クラウドファンディングで募集した物件のみ、27,186百万円)、現金及び預金(クラウドファンディング関連、15,261百万円)を流動資産から除外、匿名組合出資預り金とクラウドファンディング預り金を流動負債から除外して算出。 (執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一) 《HN》 記事一覧 |