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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2024/05/27 16:07, 提供元: フィスコ

アップル Research Memo(7):変化の速い海外で先進的な取り組みを試みる(1)

*16:07JST アップル Research Memo(7):変化の速い海外で先進的な取り組みを試みる(1)
■中長期の成長戦略

アップルインターナショナル<2788>は、今後縮小傾向が続くと予想される国内市場は慎重なスタンスで安定成長を図る一方、中古車流通市場が発展し続ける海外市場、特に東南アジアに経営資源を傾斜する方針を掲げている。中古車輸出事業では、アフターコロナでも解消されない日系メーカーの供給不足を部分的に補うことで消費者ニーズに応え、業績を拡大する成長戦略を採っている。また、東南アジアの自動車市場において、後述するような市場の変化を前提としてリスクを回避し、事業を発展させる。

1. 世界のEVシフトの状況
(1) 世界の電気自動車(EV)市場の動向
国際エネルギー機関(IEA)は、2022年の世界のEV新車(乗用車)販売台数(BEVとプラグインハイブリッド車(PHEV)の合計)が前年比55%増の1,020万台と初めて年間1,000万台を超えたと発表した。地域別では、中国が前年比80%増の590万台、欧州が15%増の260万台、米国が55%増の99万台となった。中国の割合が60%近くを占めた。同年の新車販売台数に占めるEV比率は、中国が29%、欧州が21%、米国が8%であった。

世界の高速充電器(出力220キロワット超)の設置の9割、76万ヶ所が中国に集中している。中国には、2023年末時点で公共の充電器が272万基ある。中国の業界団体では、2024年に4割増を予想している。2024年2月に、中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は、2024年中に同国内の高速道路のサービスエリアや国道沿いにEVの急速充電器を10万基設置する計画を発表した。設置する充電器は、最大出力250キロワットの急速充電器と600キロワットの超急速充電器になる。グループ企業が、新たに最大出力600キロワットの全液冷式超急速充電器を開発した。車載電池80キロワット時、航続距離600キロメートルのEVの場合、理論上では約8分でフル充電できる計算となる。実際には電池の残量や温度の影響を受けるため必ずしもこの通りにはならないが、世界的にも最高水準になる。EVの車載電池の性能向上により、超急速充電器の開発が可能になった。米テスラが中国で設置している急速充電器「スーパーチャージャー」は最大出力が250キロワットにとどまる。中国での設置は11,000基を超えたが、主にテスラ車向けとなる。ファーウェイの急速充電器は、テスラ車を含む全てのEVに対応する。

英国の市場調査会社によると、2023年の世界のEV販売台数は1,360万台、前年比31%増加した。内訳は、BEVが950万台、PHEVが410万台であった。BEVの地域別伸び率は、米国とカナダが50%増、欧州が27%増、中国が15%増であった。12月単月では、過去最高の150万台を記録した。2024年も3割程度の成長が見込まれている。

世界のEV販売台数の増加は、主に中国メーカーが牽引した。中国汽車工業協会は、2023年の自動車輸出台数を前年比57.9%増の491万台と発表した。同年における日本の自動車輸出台数は同16.0%増の442万台であった。半導体不足の緩和による生産の回復と円安により、日本の輸出台数は2年ぶりに増加したが、輸出台数世界一の座を中国に奪われた。中国の2020年の輸出台数が100万台であったことから、3年間で5倍弱に急増したことになる。2023年の輸出台数のうち4分の1がEVなどの新エネルギー車(NEV)となる。同工業会は、2024年の輸出台数を前年比12%増の550万台と見込んでいる。中国メーカーは自動車運搬船の輸送力がボトルネックとなっているため、大型自動車専用船の確保を急ぐ。2023年12月に、7,000台の駐車スペースを持つ中国初の大型自動車専用RORO船が上海で就航した。RORO船は、コンテナ船よりも走行速度が速く、目的地までの所要時間が短い。自動車が自走して積み込まれるため、荷役時間を大幅に短縮できる。積み替え作業などが不要となり、陸路と海上の複合一貫輸送が可能となる。BYDは、2024年1月に運航を開始した自動車船を含め、今後2年内に8隻の自動車専用船を確保する計画だ。

中国政府は、2009年からNEV振興策を採ってきた。国家戦略として、自動車産業の高度化と新たな経済成長の牽引役として国際競争で優位に立つために、省エネルギー車、新エネルギー車の拡大に尽力した。核心技術である動力電池を構成する正極材、負極材、セパレーター、電解液の主要4部材など、電池の高性能化のための素材開発を強化した。電池産業集積エリアの建設を通じて、生産規模の拡大を図り、自動車用電池メーカーと主要4部材の中核企業を育成した。企業には、NEVや車載電池製造に不可欠な鉱物資源であるリチウム、ニッケル、コバルト、白金などの確保を奨励した。NEV普及策としては、充電設備建設のための奨励金の支給、購入者への補助金の支給、車両取得税の免除、公共機関によるNEV調達の段階的拡大、自動車企業の平均燃料消費量の管理制度導入などが盛り込まれた。

中国のEV市場では、約300社がしのぎを削り、過度な価格競争に発展している。2023年の中国の自動車生産台数は前年比11.6%増の3,016万台、販売が同12.0%増の3,009万台であった。中国は不動産不況などにより消費が低迷しているが、生産過剰が輸出圧力を生むことになる。

(2) 欧米ではEVシフトの見直し
欧米では、ガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止する計画が見直されている。欧州連合(EU)は、2035年までにエンジン車の新車販売を禁止する方針だった。ドイツ、イタリアや中東欧諸国の要望を受け、合成燃料「e-fuel(イーフューエル)」を使うエンジン車は2035年以降も新車販売を認めることで合意した。英国は、2030年にガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する計画を、2035年に延長した。

米環境保護局(EPA)は、2023年4月に、乗用車とトラックの二酸化炭素(CO2)排出量を2032年までに2026年比で平均56%減らすよう義務付ける規則案を公表した。この規則に基づけば、新車販売に占めるEVの割合は2030年までに60%、2032年までに67%に高まると試算されていた。全米自動車労働組合(UAW)は規制強化のペースを緩めるよう要請、大手自動車メーカーも達成困難とした。そのため、当初案が見直され、2030年のEV比率が60%以下の水準となることが想定されている。

自動車が自国の基幹産業である欧米では、中国製EVの短期間に洪水のように押し寄せる輸出の拡大に危機感を強め規制措置を講じている。フランス政府は、2024年からEVの購入補助金制度の適用から石炭火力発電による電力を使用して生産されたEVを対象外とする。フランスメーカーであっても、中国での生産分は購入補助金の対象から外れる。原子力発電や再エネ発電による電力を用いて生産されたEU製、さらにフランス製のEVであればあるほど、多額の購入補助金が交付される。米国は、バイデン政権がインフレ抑制法(IRA)の下で国産EVの優遇を図っている。トランプ前政権も国内市場保護策を重視していた。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)


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