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カッコーの巣の上で

未見、未読の方はぜひこの作品を経験してほしい

表紙に若きジャック・ニコルソンの写真が載せられていますが、この本はアカデミー賞も取った同名の傑作映画作品の原作です。

映画の方は今からもう40年以上前になりますが、若い頃に映画館で見ました。その時の衝撃は今も忘れません。 それ以後、DVDなどで何度か見直していますが、そのたびに新しい発見があったりする作品でした。

今回、この原作本はその頃のことを思い出しながら読みました。ほぼ映画は原作を忠実に映像化している印象がありました。

舞台は閉鎖された精神病院。そこに新患として登場する主人公。「自由」をめざし病院内で奔放にふるまう主人公と、それを抑え秩序を保とうとする師長。そして、個性的な入院患者の面々。衝撃的かつ悲劇的なラスト。

若い時はジャック・ニコルソンが演じた主人公に肩入れし、それを抑圧する病院側をいわば「悪」のようにとらえていたところがあります。ところが年をとって作品を見直してみると、さて、その単純な見方でいいのかどうかという疑問がわいてきました。

病院側の自由の抑圧者の代表ように見える師長は、実は職務に忠実で誠実に秩序を保とうとした患者思いの優れた看護師だったのかもしれないと思うようになりました。 今回、このあたりのことを意識して本作を読んでみましたが、やはり単純に師長を「悪」「敵役」として描いたような記述はほとんどなかったように思いました。

この精神病院のような閉鎖された社会というのは現在も多く存在します。現代日本の多くの精神病院もでしょうし、ひどい事件もあった障害のある人が暮らす施設などもそのような場合があるでしょう。かつででいえばハンセン病の療養施設。

また、現在の様々な療養型の病院というのも該当する場合があるかと思います。 そうした場では社会一般と異なる独自の規範や「常識」がいわば当たり前になってしまい、そこにいる人たちはそのおかしさに麻痺してしまうようなことが現代の社会の中でも多くあるように思います。

さて、そこに切り込み、状況を「改善」するためにはどうすればよいのか・・・。

本でも、映画でも、この作品は現代社会にそのままあてはまる様々な問題を考えさせてくれるきっかけとなる素晴らしい「切り口」が今でも十分にあると思います。

映画から本でも、本から映画でも、どちらでもよいと思いますが、未見、未読の方はぜひこの作品を経験してほしいと思います。

本を復刊してくれたパンローリンクさんに感謝します。

ふしみん 個人投資家 投資歴25年
鳳凰堂のランダム・ウォーカー


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