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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/11/10 10:06, 提供元: フィスコ かんぽ生命:巨大資産と新戦略の掛け合わせでさらなる成長と市場評価改善へ*10:06JST かんぽ生命:巨大資産と新戦略の掛け合わせでさらなる成長と市場評価改善へかんぽ生命保険<7181>は、日本郵政グループに属する国内最大級の生命保険会社であり、郵便局ネットワークを通じた販売チャネルを活用して全国展開している。主力事業は個人保険で、保有契約件数(個人保険)は2025年3月末時点で1,881万件に上り、国内トップクラスの規模である。事業構造は単一セグメントの生命保険事業であるが、販売チャネルの広さと顧客基盤の厚さにより収益の安定性が高い。特に2024年1月から販売を開始した一時払終身保険は金利上昇を背景に顧客需要を捉え、2025年3月期の全体の新契約件数(個人保険)は79万件(前期同期比27%増)と大きく増加している。 同社の強みは、第一に全国の約2万局に及ぶ郵便局ネットワークを活用した来店型サービスと約1万人の営業社員による訪問サービスが提供できる点である。地域に根差した販売網を背景に、都市部から地方まで幅広い顧客層にアプローチ可能であり、また郵便局という地域に根差したブランドイメージによる生命保険サービスの浸透力は他社にない優位性を持つ。第二に約60兆円に及ぶ巨大な総資産を背景とした資産運用が挙げられる。ERM(全社的リスク管理)フレームワークの下で資産と負債の管理を徹底しつつ、オルタナティブ資産などの収益追求資産への投資を進め、順ざやは2025年3月期に前年同期比55%増の1,425億円となった。昨今の金利上昇や収益追求資産への投資も追い風となり、2026年3月期には過去最高の順ざや2,000億円程度を見込む。第三に近年資本効率が改善している点である。再保険の活用や資産運用の多様化を通じたリスク対比リターンの向上を図りつつ、ROE水準の引き上げに取り組み、市場評価改善の基盤を固めている。 2026年3月期第1四半期決算では、新契約件数(個人契約)は一時払終身保険の販売減少等の影響により、スローな滑り出しとなった(前年同期比60.6%減)。一方、順ざやは株式・オルタナティブの配当の増加等により、前年同期比218億円増の473億となった。連結四半期純利益は、運用環境の好転等による順ざやの増加等により前年同期比137億円増の346億円となった。連結四半期純利益の2026年3月期の業績予想に対する進捗率は25.5%であり、順調に推移している。 今後の成長戦略としては、「お客さま本位の保険サービス追求」「巨大な資産規模を活かした資産運用」「収益源の多様化」を柱に据える。「お客さま本位の保険サービス追求」では郵便局ブランドの更なる活用に加え、デジタル施策やカスタマーセンター機能の拡充によるCX向上に取り組む。「巨大な資産規模を活かした資産運用」では、インフレ耐性資産へのシフトや、インパクト“K”プロジェクトを軸としたサステナブル投資に注力し、今後の金利上昇の恩恵を受けながら長期的な成長を目指す。「収益源の多様化」では、三井物産やKKR・Global Atlanticに加え、2024年に大和証券グループと資本業務提携契約を締結し、資産運用力の強化を図るとともに、収益源の多様化を進めている。これにより、国内外での新たな成長機会の獲得を目指している。 株主還元については、2025年3月期より、生命保険特有の新契約増加が短期的に当期純利益を押し下げる影響等を一部調整し、新契約の増加をタイムリーに利益に反映する「修正利益」を株主還元原資として導入した。2026年3月期の修正利益は1,420億円程度になる見通しであり、これを踏まえて1株当たり配当は124円と、前年度の104円から20円の増配を見込む。さらに、2026年3月期は、単年度で総還元性向55%程度を目処に株主還元を実施する予定である。自己株式の取得・消却も実施しており、資本政策を通じた株主価値向上への取り組みが進んでいる。修正PBRは依然として0.67倍(※1)と割安な株価水準が続いているが、2026年3月期の修正ROEは8.5%(※1)と見込まれ、2年前の6%の水準から大きく改善基調にあり、市場評価の見直しが進めば株価の上昇余地が期待される。 注:修正利益=当期純利益+責任準備金の調整+のれん償却額 修正PBR=時価総額÷(株主資本−のれん未償却残高) 修正ROE=修正利益÷(株主資本−のれん未償却残高) ※1:株価は2025/5/16終値。株主資本およびのれん未償却残高は2025年3月末値。 総じて、かんぽ生命は全国に広がる販売網と巨大な資産を活かした資産運用を背景に収益構造を改善しつつある。増配方針や総還元性向の引き上げにより、株主重視の姿勢も鮮明である。中期的な成長戦略の着実な実行と市場評価改善への取り組みにより、同社の収益性と株主価値の一層の向上に注目していきたい。 《HM》 記事一覧 |